本文の始まりです

2015.10.05 : 平成27年9月定例会


◯副議長(原竹 岩海君) 佐々木允君。(拍手)
*佐々木(允)議員質問


◯三番(佐々木 允君)登壇 皆様、おはようございます。民主党・県政クラブ県議団、田川市選挙区の佐々木允でございます。通告に従い、政務調査に基づき、今回は福岡県史の発行についてと、労働政策に関する本県と国との一体的実施及びハローワーク特区についてをそれぞれ質問をいたします。どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、福岡県史の発行についてです。福岡県は、原始、古代から近世、近代のいずれの時代においても日本全体にとって重要な歴史の舞台となってきました。またその間、多くの偉人や文化人、政財界の方々を生み出した県でもあります。特に近年では、我が田川市などが所有する山本作兵衛炭坑記録画の世界記憶遺産登録、そして今般、明治日本の産業革命遺産がユネスコの世界文化遺産に登録をされ、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群が世界文化遺産国内推薦候補に決定されるなど、福岡県が世界的にもすばらしい歴史がある県として認知をされてきています。
 さて、この歴史を後世に伝えていくものとして昔より重要な役割を担っているのが歴史書であります。日本においては日本書紀や古事記、徳川幕府の公式記録である「徳川実紀」など数多くあります。文章による歴史書は、単にこれまでの歴史を後世に伝えるという目的にとどまらず、悠久の歴史に育まれた日本という地に生まれ育った我々の誇りを高め、心のよりどころとしても大きな役割があります。そしてこのことは、福岡県の歴史をまとめている福岡県史にも同様に言えるのではないでしょうか。福岡県史について現状の取り組みや、また今後について以下質問をいたしたいと思います。
 まず、これまでの本県の県史の発行状況についてです。戦前より断続的に県史は発行されてきていますが、本格的な県史編さん作業は昭和五十六年以降となります。この昭和五十六年以降に行われた福岡県史の発行状況などについてお聞きをいたします。また本県の体系的な歴史書である福岡県史について知事はどのようなものだとお考えなのか、その認識も含めて、あわせて御質問をしたいと思います。
 次に、福岡県史の発行主体についてです。これまでも福岡県史は福岡県が主体で編さん、発行されてきましたが、そもそも県史を体系的、組織的、継続的に取り組めるのは、私は福岡県しかできないと考えますが、知事も同様の思いなのかお聞きをします。
 次に、二〇〇二年七月に発足した福岡県史編さん等検討委員会についてです。この検討委員会は、新たな県史編さん事業に取り組む前提となる課題や問題点を整理し、今後の改善策を講じるために発足した組織で、二〇〇五年三月に県史編さん事業のあり方についてという提言をまとめています。ここでは、福岡県史のこれまでの経緯、歴史、課題などが述べられており、その上で、これからの県史編さん事業のあり方として主に四点提言をしています。第一に、編さん体制は県の責任で構築すべきこと、第二に、編さん実務体制は県直轄方式が望ましいこと、第三に、次期の編さん事業については、三年程度の検討、準備期間を設け、基本方針を策定すること、第四に、基本方針に基づき可能な限り速やかに新たな県史編さん事業に着手すべきであること、以上であります。また、この提言を行った検討委員会は、県幹部、そして我が会派の吉村会長など県議会議員、大学教授などにより委員が構成をされており、その会長は副知事であります。このことからも、この提言はいわば議会、執行部、学識経験者の統一的見解であると言っても過言ではありません。しかし、提言提出後十年が経過をした今日まで、新たな基本方針は発表されておらず、新たな県史編さん事業にも一切着手できていない状況です。知事も提言を読まれたことだと思いますが、当時の提言の思いからすると非常に残念な結果であると同時に、この状況が続けば、本県の歴史を紡ぐ作業はずっとおくれてしまうことになります。知事はなぜ提言が発表されて十年が経過する今日まで基本方針を出されなかったのか、また知事として、この提言に対する評価をどのように考えているのかお尋ねをします。その上で、県史編さん事業の現状に対する評価もあわせてお示しください。
 最後に、今後の県史編さん事業についてです。先ほど述べたように、本提言が出されてから十年が経過している中、県史編さん事業の再開のめどは立っていません。編さん事業再開に当たっては、提言に基づき早急に基本方針を策定することが必要ですが、基本方針策定について知事のお考えをお示しください。
 また県史編さん事業の再開について知事としてどのように取り組むおつもりなのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
 続いて、労働政策に関する本県と国との一体的実施及びハローワーク特区について質問をいたします。全国知事会では、ハローワークの地方移管について、就職相談から職業紹介まで一貫した支援が可能となること、生活相談等きめ細かい支援をワンストップで提供できることなどが主な理由で、強く国にハローワークの地方移管を要望しているところです。このことを受け、国も関係省令等を変更し、二〇一二年十月からハローワーク特区を佐賀県、埼玉県で開始をしています。このハローワーク特区では、県と国との労働施策に関するルールの統一、統一施設での一体的サービスの提供、何よりも意思疎通を行う際のプラットホームとして特区が大きな役割を担っていると聞いています。また埼玉県では、これまで延べ十二名の県の職員をハローワークに配置するなど、人材交流も行っているとのことでした。全国知事会は今年六月、ハローワーク特区開始から三年を経過することを受け、ハローワーク特区等の成果と課題の検証についてを発表しました。
 まず、知事として全国知事会から出された今回の検証と同じ思いなのか、もちろん知事会及び検証のメンバーでもありますので、同じ方向性だと思いますが、改めて知事のお考えをお示しください。
 続いて、ハローワーク特区の実施についてです。全国知事会による検証では、ハローワークの地方移管が実現するまでの間、県と国との事務の一体的実施及びハローワーク特区等の充実についても言及しています。そのうちハローワーク特区について全国知事会は、実施箇所の拡大を訴え、その方法として希望する都道府県が実施できるよう、いわゆる手挙げ方式を提唱しています。知事は、ハローワーク特区について手挙げ方式が実現した場合、全国知事会の検証で言及したとおり、ハローワーク特区の箇所拡大の一翼として、ハローワーク特区の申請をされるおつもりはおありでしょうか。明確な答弁を求めます。
 続いて、ハローワーク等での県と国との一体的事務の実施についてです。これについても先ほど述べたように全国知事会の検証で一体的事務の充実を訴えています。現在、本県と国との間でハローワーク等との一体的事務の実施はどのようなことをされているのかお示しください。
 また、今行っている施策以外で本県と国との一体的実施が可能となる事務はどのようなものが想定されるかお聞きをします。またその実施について、全国知事会の検証のとおり拡充を本県としても行うことができるのか、そのことについても、あわせて知事のお考えをお示しください。
 最後に、私の地元でもある田川地域など地域を限定した一体的事務の実施についてです。本県には田川地域を初め労働環境の厳しい地域も数多くあり、地域の労働環境に合わせてきめ細かい施策の実施が求められ、その解決のために県と国との一体的事務の実施も選択肢の一つだと思います。地域に絞った一体的事務の実施について可能だと思われる事業は、今行っている事業以外に、知事としてどのようなものがあるかお示しください。また、それらの実施の可能性についても、あわせてお尋ねをいたします。(拍手)


◯副議長(原竹 岩海君) 小川知事。
*知事答弁


◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、県史に対する私の基本的認識、それから本県の県史の発刊状況についてでございます。県史は貴重な資料を県民全体の財産といたしまして後世に伝え、残し、県民の皆さんに広く活用され、郷土の歴史について親しみを深めていただくものであると、このように考えております。本県では、昭和二十四年から四十年までの間、古代から明治四年の廃藩置県までを対象としました通史でございます福岡県通史、四巻八冊というものを刊行いたしております。また、昭和五十六年には古代から現代までを網羅した福岡県史の普及版であります「福岡県の歴史」、これを刊行したところでございます。これに加えまして近世、近現代、江戸時代から第二次世界大戦までの間でございますが、その詳細版として、県史全六十六巻を昭和五十六年から平成十四年までの二十二年間、約二十億円をかけて刊行いたしております。提言で言うところの考古、古代、中世、戦後、その詳細版につきましては刊行されていない、そういう状況でございます。
 県史の取り組みについてでございます。これまでの県史編さん事業を見てみますと、県が事業主体となってこれを進めておりますので、仮に県史編さん事業をやることになったとすれば県が主体になると、このように考えております。
 平成十七年三月にいただきました提言に対する評価でございます。この提言は、議員も御指摘されましたが、御指摘された委員で構成された県史編さん等検討委員会が取りまとめられたものでございます。県の厳しい財政状況を踏まえながら、今後県史編さん事業を再開する場合の編さん体制などや、収集された史料の整理、保存のあり方について提案がなされている、そういう提案であるというふうに認識いたしております。
 また、基本方針につきましては、これが出された当時の県の厳しい財政状況を考えて、新たな県史編さん事業の実施は厳しく、また喫緊に事業を実施する必要も乏しいと判断をして策定されなかったものと承知をいたしております。
 県史編さん事業の現状についてでございます。提言のうち、二つあります一つは史料の整理、保存でございますけれども、もう一つは、次期県史編さん事業のあり方と二つあるわけでございますが、まず史料の整理、保存につきましては、平成十四年度の県史編さん事業の終了後、毀損、散逸が著しい古文書、古絵図、そういったものの整理、保存等の事業にまずは優先して取り組んできたところであります。また、福岡県の文化財保護の拠点施設として整備をいたしました新九州歴史資料館では、適切な保存、保管ができます収蔵庫を保有しておりますことから、平成二十二年十月までの間にこれらの史料を移管をいたしまして、二十三年四月から、この資料館におきまして公開をさせていただいているところでございます。一方で、もう一つの提言でございます次期県史編さん事業のあり方につきましては、平成二十二年十一月に庁内に県史編さん検討チームを立ち上げまして検討を行ったところでございますけれども、厳しい財政状況が続いておりますことから、事業の再開は難しいと判断をしたものと承知をいたしております。
 基本方針の策定と事業の再開についてでございます。基本方針の策定及び事業の再開につきましては、今御答弁申し上げましたとおり、過去提言がなされて二度にわたり検討を重ね、その実施を見送ってきた、そういう状況にございます。県史についての私の基本的な認識は冒頭の御答弁で申し上げたとおりでございますけれども、直近に行われた県史六十六巻は二十億円以上かけておりまして、社会保障費や公債費といった義務的経費が増嵩いたしております厳しい財政状況とその費用対効果等を考えますと、基本方針の策定及び事業の再開を行う状況にはないと、このように考えております。
 次に、ハローワーク特区等の成果と課題の検証でございます。ことしの六月、全国知事会が公表いたしました検証結果におきましては、就職相談から職業紹介まで一カ所でサービスの提供ができるようになったこと、また身近な場所において継続的な支援ができるようになったことなどがその成果として挙げられているところであります。一方で、一体的実施では実施施設内における国と地方の事務処理、手続の統一、意思疎通が円滑に進まないこと、またハローワーク特区におきましては、知事から都道府県労働局長への業務に関する指示が認められているものの、二つの組織、命令系統が残っていることから迅速な対応が困難であった、そういう課題も明らかになったところでございます。本県では、これまでも年代別、対象者別の支援センターを設置いたしまして、求職者の方へのきめ細かな支援に努めてまいりました。私といたしましては、今後一層の求職者の利便性向上を図っていくためには、全国知事会の提言にもありますとおり、ハローワークを地方へ移管する必要があると、このように考えております。また、地方移管が実現するまでの間は、この知事会の提言を踏まえ、一体的実施やハローワークの特区制度の充実を図っていくことが不可欠である、このように認識をしているところであります。このため、引き続き全国知事会を通じて国に対し、働きかけを行ってまいります。
 ハローワーク特区の実施に向けた県の対応についてでございます。ハローワーク特区におきましては、先ほど御説明申し上げましたような課題がありますものの、ハローワークの地方移管への突破口になるものと考えております。国では、九月の二十八日から地方分権改革有識者会議の専門部会におきまして、ハローワーク特区の取り組み状況などの検証が始まったところでございます。まだ緒についたばかりでございますけれども、特区の実施箇所が今後拡大される場合には、利用者の一層の利便性の向上とサービスの充実を図っていく観点から、福岡県としても手を挙げていきたい、このように考えております。
 次に、一体的実施事業の実施状況と今後の充実についてでございます。本県におきましては、平成二十四年度から、中高年就職支援センターにおきまして一体的実施に取り組んできております。具体的には県が行っておりますキャリアコンサルタントによります個別相談、研修、それから面談会といった多様な私どもの支援メニューと、国の行っております職業紹介とをワンストップで効果的に今、実施をしているところでございます。この結果、一体的実施後、就職者の数は一割強増加をいたしておりまして、二十四年度以降は大体二千八百人程度で推移をしてきているところでございます。他の自治体の一体的実施の事例でございますけれども、UIターンの希望者への住居確保という自治体サービスと国の職業紹介とを同一施設内で実施をする例、また地域の実情、利便性から県内を二地域に分けて二カ所で一体的実施を行っている例がございます。ハローワーク特区の取り組みはもとより、こうした自治体における一体的実施の取り組みにつきましても、今後、国において検証が行われていくことになっております。県といたしましては、この国の検証状況も踏まえながら、一体的実施の充実につきましても検討をさせていただきたいと思っております。


◯副議長(原竹 岩海君) 佐々木允君。


◯三番(佐々木 允君)登壇 知事から答弁をいただきました。
 まず県史編さんについて、知事は県史編さんの重要性に言及しつつも、厳しい財政状況の中、その費用対効果を考えれば、基本方針の策定及び事業の再開を実施する状況にはないということを述べられました。ということは、県史編さんについて、費用という税金投入額と、それに対する効果をどのように比較検討してその判断を下されたのか、ぜひ知事には教えていただきたいと感じたところです。というのも、そもそも県史編さん事業に対する費用対効果とはどのような場合が当てはまるのでしょうか。確かに県史がベストセラーになり、負担額を超える収入を上げれば費用対効果は明確になるのだろうと思います。しかし、今の話で違和感を覚えたのは私だけではないと思います。要するに、県史といった歴史や文化財にかかわる事業を費用対効果、コストパフォーマンスで政策判断することがそもそもできるのか、ということであります。事実、世界遺産登録に向けたこれまでの事業も、九州歴史資料館の設置も、そして文化財保護のための必要予算も、コスパがいいからしようという考えで実施されていないはずであります。つけ加えるなら、今後費用対効果でその対比が困難な事業である歴史や文化財にかかわるものまで費用対効果という尺度で政策判断を行うということになれば、事実上、事業の推進は困難になるのではないかと、私は危惧するところです。
 そもそも県史編さんのあり方についての当時の提言では、可能な限り速やかに県史編さん事業に着手すべきというものが最も重要な提言でした。しかも重ねて申し上げると、このメンバーは副知事を会長に、県幹部、議会、研究者で構成をされ、財政状況も三位一体改革により現在に比べると悪化していた状況の中、財政もよく理解した副知事が会長のもとで決断した提言であります。
 一方、執行部の検討は、提言を受けた七年近くが経過した後に初めて行われており、このメンバーは副課長をトップとした内部組織のみで構成をされ、会議も二回だけ行われたと聞いています。そして、その結果について、私が調査した限り議会や県民に一度も知らされてはいません。この提言の重みに対する対応の差は大きく乖離しているように思います。説明責任を果たすことをぜひ望みたいと思います。
 また外形的に見ると、新築された九州歴史資料館、新たに設置された福岡共同公文書館など提言を行った当時に比べても県史編さんの体制はむしろ整っています。そして先ほど知事が述べられたように、県史編さん事業は福岡県でしか行うことができない事業であります。ぜひ知事におかれましては福岡県の歴史を長く後世に伝え、残していく県史編さん事業について、再度検討し再開していただくことを強くお願い申し上げ、この件の意見としたいと思います。
 続いてハローワーク特区等についてです。これについて知事は、本県としても手を挙げていきたいと考えていると、ハローワーク特区について実施の意向を言及をされました。また県と国とのハローワーク特区等での事務の一体実施についても、一体的実施の充実についても今後検討してまいると、検討の開始もあわせて言及されております。いずれの発言も、今後の県労働行政に新しい一歩になることは間違いありません。地方分権有識者会議について全国知事会にその時期についてお尋ねをすると、年内にはハローワーク特区等についての議論の結論が出され、その後閣議決定がされる予定だと内閣府からは聞いているということでした。まさにこの数カ月が、最も大切な時期であります。知事におかれましては、ハローワーク特区等の実現がなされた暁には実施に向けた体制が整えられるように、今から十分な情報収集と準備をお願いをしたいと思います。
 また、事務の一体的実施に当たっては、市町村との連携も不可欠です。あわせて市町村との連携についても御検討をいただきたいと思います。
 以上、要望をいたしまして、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

福岡県議会議員
佐々木まこと事務所

〒825-0002 福岡県田川市大字伊田4510-6
→アクセス

TEL 0947-85-9015

[受付] 9:00〜17:00 月〜金(日・祝日休)

FAX 0947-85-9007

[受付] 24時間・365日OK

メールでのお問い合わせ

  • LINE公式アカウント