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総文視察1日目(東京都荒川区職員政策について)

2009年10月26日

今日は総務文教委員会行政視察。午前8時に市役所を出発し、飛行機で東京へ。

その後

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電車を乗り継ぎ

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荒川区役所へ。

 

早速非常勤職員の処遇改善について説明を受けました。

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旗を作って飾ってくれる議会なんて、初めてでびっくりしました(^^;

 

まず区長(特別区なので、首長は区長と呼びます)が幹部職員をはじめ、多くの職員に「区政は区民を幸せにすること」といつも説いており、人事政策の転換も区長の強いリーダーシップが出発点とのことでした。

 

例えば、住民票の交付に関しても、単に行政上では住民票を交付することで仕事は完了するかもしれない。しかし多くの住民は数年に一度しか来ない市役所で、もし嫌な思いをさせてしまったら、その後ずっとその思いになる。その点からも住民票の交付が目的ではなく、その後に役所に行ってどれだけ幸せだったのか、役に立ったのか、など顧客目線をまず持つ必要があるとおっしゃっていました。

 

その上で人事政策はこれまでの「管理」するもので、「削減」するものであってはいけない。職員の能力開発、そしてそのための環境づくりこそ人事政策の根幹ではないか、と述べられていました。

 

またそうなると、人件費は単なる負担ではなく、住民を幸せにするためのお手伝いをするプロを雇うための財産である、とも付け加えていました。

 

言葉でいえば、これまでの「人材」から「人財」、公務員の財産なのだという視点で取り組むべきであるとのことです。

 

そのために荒川区では

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○「新しい時代に対応した人事戦略構想」

○「荒川区における新たな研修体系」

 

という冊子をつくり、その具体的方針について明示しています。

 

まず区役所に入ったばかりの若手職員の育成について、普通民間職員なら2年目から会社の看板を背負って取引できるのに、なぜ公務員は何年たってもそうできないのかという疑問から始まり、しかし「公務員は育成する時間がかかって当然ではない」という基本姿勢から、3年以内にほぼすべての業務について基本的な内容を習得するプログラムをもうけています。

 

また選択制で「荒川区職員ビジネスカレッジ」という企業内大学(と言っても正規の大学ではありませんが)を開設。新人から中堅・キャリア層までを対象に能動的に勉強をする機会を創設もしています。

 

特にその点は民間の研修機関や会社のノウハウを最大限活用し、能力開発を行い、またその結果として人事評価システムも同時に行っているとのことです。

 

また行政改革についても、単に財政論議だけではなく「区民サービスの向上を図りつつ」という言葉をあえて入れ、民間ノウハウの勝っている事業については積極的に民間が行い(例えばスポーツ施設運営でも、民間スポーツ施設が多くの教室を設けるなどして、区民からもまずは指定管理者を選ぶまでになっているとのこと)、逆に直営のほうがサービス向上につながるものは、直営で残すなどをしています。

 

その代表例が図書館と博物館。どれも民間企業ではノウハウは蓄積されておらず、事実委託したとしても多額の経費がかかるという事態になりました。

 

さて、その中で今回の視察の大きな柱の一つである非常勤職員の処遇改善について述べられます。

 

まず、荒川区では臨時職員(半年以内の方)と非常勤職員(複数年採用する田川市で言う嘱託職員)という制度があります。今回はそのうち非常勤職員についてを中心に説明がありました。

 

また非常勤職員は、田川市の場合上限年数が決まっていますが、荒川区の場合は設けておらず、すでに28年間も非常勤職員という方もいます。

 

そういう前提のもと、非常勤職員制度の改正については以下の6点にわたって平成19年4月1日より改革を行います。

 

1、統一基準に基づく採用

これまで非常勤職員は、各課ごとバラバラの採用を行っていたのを、一定のルールを設ける。これについては事務非常勤については、人事担当課が一括して一次選考を行うとのことです。

 

2、能力・技量・責任に応じた職層の新設

非常勤職員についても能力や技量に応じた役割、担うべき責任に応じた職層を設定し、また評価・選考もその際に行うように規定します。具体的には

 

①一般非常勤:常勤の一般職員に準じた専門的業務を担う

②主任非常勤:専門的な分野における日常的な業務に携わるとともに、企画立案的な業務を行う

③総括非常勤:主任非常勤の業務に加え、当該分野における非常勤職員のとりまとめを担う

 

の3点です。 一般非常勤の事務職については、作文とワード・エクセルの試験を実施し採用するのですが、おおむね10倍の倍率となっているそうです。また主任非常勤については受験者の20%程度しか昇級せず、総括非常勤については現在ポストが2つしかなく、かなりなるのは困難とのことでした。

 

3、職責に見合った処遇への改善

一般非常勤については、短大卒で5年間仕事をした一般行政職員をベースに決定しているとのことです。しかし非常勤は地方公務員法で常勤の4分の3までしか働くことはできないので、それに4分の3をかけて算出した給与の結果

 

○一般非常勤:171,300円

○主任非常勤:202,100円

○総括非常勤:250,300円

 

と規定しています。もちろん手当不支給の原則がありますので、ボーナスはなしです。

 

また所定の勤務時間を超える勤務が発生した場合も、合計40時間を満たない範囲で超過勤務を上席者が命じることができるとも規定しています。

 

有給休暇についても、一般行政職員と同様に、夏期休暇3日、病気休暇有給で10日以内、慶弔休暇10日を設けています。

 

4、常勤職員に準じた勤務評定の実施

職層の設定などにより、役割や責任の明確化を進めるためにも一般行政職員に準じた勤務評定を行っているとのことでした。

 

5、非常勤職員にも研修を実施

先ほどのべた企業内大学の受講や、一般行政職員と同様に人権研修、接遇研修、新任研修などを受けてもらうように規定しています。これは「住民にとっては非常勤も一般行政職員も同じ職員しか見えない。だから職員と同じように研修を重ねる必要がある」という思いから規定されたものです。

 

6、一般行政職員に準じた福利厚生

荒川区職員互助会に非常勤職員も正会員として、各種サービスの提供を受けられるように制度改正を行っています。

 

以上が説明でした。

 

質疑では

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私がまず、管理職員の意識改革についてどのように行っているか質問。荒川区では新たに「新人を受け入れるための研修」を実施予定で、また管理職を対象とした企業内大学大学院を創設、課長級のほとんどは参加して勉強をしているとのことでした。

 

他の議員では再任用について質問もあがっていました。現在荒川区では、再任用に関して部課長クラスはほとんど再任用していないとのことで、退職者の3割ぐらいを採用、年金の満額支給までを期間と定めているとのことでした。

 

またこのような人事戦略の作成に当たっては、大学教授や民間のマーケティング会社などを積極的に活用しているそうです。

 

そしてこの制度については、基本的に地方自治法や地方公務員法が予定する状況ではないため、総務省から様々な意見があったとのことでした。しかしその理由としては、

 

「荒川区自体はしっかり考えた上で作られたものであるが、他の自治体が単に真似をして作った場合に、果たして大丈夫か、とと心配している」 

 

という説明もありました。 

 

最後に

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記念撮影をしました。

 

私の感想・・・

 

私自身、人事政策について6月議会で一般質問をし、その前から荒川区には非常に注目していたのでとても勉強になりましたし、生の声を聞けてとても良かったです。

 

人材開発については、荒川区がおっしゃるようにすでに民間でそのノウハウが蓄積されています。その上でこれまで役所側が蓄積してきた公共性というノウハウをマッチングすれば、かなり職員意識も変わるだろうと思いました。

 

事実担当課長が勉強会には積極的に民間関係者をお呼びし講演をお願いしていることをあげた上で「公務員はその世界しか知らないし、学ぶ機会がない。その上で講演をきき、自ら学ぶことで、積極的に取り入れ、区民の幸せのために働くようにしなければならない」とおっしゃっていることからも、そこから得られるものは非常に大きいと思います。

 

また企業内大学院に関しては、講師陣もさすがは東京だけあり、公共政策系大学院などで教鞭をとる学者や、一流の民間企業関係者、または数十年現場で働いてきたベテラン職員など、多種多様な方を呼んでいます。

 

以上の点からも、非常勤職員の処遇改善は全国的にも注目されましたが、荒川区としては人事政策の抜本的改革の中の一つとして、非常勤職員の処遇改善を入れているだけであり、一番は人事制度の改善にあるということが分かりました。

 

しかし人事担当課長の説明はとてもなめらかで、とことんこのことを知り尽くし、かつ思いをとてももって取り組んでいるな、というのをびんびん感じることができるものでした。

 

やはりトップである首長がしっかりとしたミッションを持てるか、そしてそれを職員に伝える能力があるか、そして職員はそれを受け止め、自らのものにしていけるか、などが有機的につながっていないといけない、ととても強く感じました。事実総務省から「正式に指導に行く」と言ってきても頑として意志を変えず、改革を成し遂げた強さは首長も職員もさすがの一言です。

 

その点からもトップの意志がとても大切なのです。さて田川市は・・・。

 

また職員研修をしっかりやっているなあ、というのは入ってきてすぐに感じることができました。受付職員は笑顔で「こんにちはー」と述べ、通りがけの職員がエレベーターのドアの開閉をさっと手伝ってくれました。議会事務局に行けばすべての職員が外に出て挨拶もしていました。

 

ただ感じるのが、同じ業務を行いながら非常勤職員と正職員がいるのですから、役所内の格差が発生するのではないか、その点が十分に議論されるべきと感じました。人事政策の改善自体はとても先駆的と感じますが、非常勤職員の処遇改善については、まだ過渡期としての帰着点であり、その先を今からどう議論するのかが大切になってくるだろうと思います。

 

最後に総務文教委員会のメンバー一同、とてもこの制度や思いについては「目から鱗」の状況になったとのことでした。この人事制度改善については、総務文教委員会としても集中して一度審議をしようと、委員長や他の議員が述べていました。私もいいことだと思います。

 

田川市の人事担当者様、よろしくお願い致します(^^)

 

以上、初日の行政視察報告でした。いまは24:20。かなり打ち込むのに時間がかかりました(><明日は同じぐらいは書けないかもしれません・・・。

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