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議員数は自治の視点で

2009年11月09日

今日、議会各会派代表者会議が行われました。私は代表者ではないので参加をしていませんが、その中の議題として議員定数削減が議論された模様です。

 

議員定数削減については、田川市の行政区の代表者(田川市では区長と呼びます)の連合体である「田川市区長会」が同事項について要望書を提出しています。それに対して、議会としてどう対応するか、となりますが、まずは各会派持ち帰りとなりました。

 

まずはその定数削減に関する要望書の全文をここで掲載します。

 

田川市議会議長 高瀬春美殿

田川市議会議員の定数削減に関する要望書

現在、わが国が抱える借金は、国と地方で700兆円を超え、国と地方の財政は危機的状況にあります。

国は、行政の効率化、簡素化を掲げた「三位一体に改革」(原文ママ)を実施しましたが、改革による交付税や補助金の削減を受け、地方は大変厳しい財政運営を強いられる結果となりました。さらに、昨年のリーマン・ブラザーズ破綻を契機とした世界同時不況の影響もあり、国と地方の税収は、軒並み悪化しているところです。

こうした中、田川市も例外ではなく、その財政状況の悪化は深刻であり、市民にとりましても、教育・行政をはじめ各種行政サービスの低下に直接つながるものと大変危惧するところです。

将来的に在集の増加が見込めない中、社会保障費の増大、就労事業の集結、新ごみ処理施設の建設、地域医療等多くの問題に直面しており、さらに市の財政負担が大きくなるものと推測されます。

長期的にも短期的にも、将来の市の財政状況に不安を内包する状況においては、議会経費削減や市の財政健全化のため、現在法定数より8人少ない22人の議員定数でありますが、議員自らが定数の削減を行うべきと考えます。

議員定数の削減により、議会チェック機能が低下するおそれがあることは市民の本意ではありませんが、反面、議員の少数精鋭化や全市的な視野を持つこと、議論の迅速化等がはかられるとともに、市民一人一人が意識や責任を再認識することにより市民活動の活発化にもつながると考えます。

以上のことから、地方分権時代に相応しい地方議会のあり方や田川市の財政状況に応じた議会運営、近隣市における議員定数等を踏まえ、次期市議会議員選挙までに議員定数の見直しを実施するよう要望します。

 

以上が全文です。

 

非常に重要な提起ではありますが、一方で十分論議をしないと行けない事項もたくさん文章中に含まれています。私なりに思うことをここで書きたいと思います。

 

まずこの要望書は、議員定数削減について要望をしているもので、その最初に「財政健全化のため」定数削減を要望しています。前段の文章においても財政危機が大きな割合を占めていることからも、この要望書における最も大きなテーマが、財政分野をベースとした議員定数削減があるのは言うまでもありません。

 

しかし結論を先に言うと、私自身は財政論議が主となった議員削減は行うべきではないと強く思っています。これを財政論及び住民自治の観点から述べていきます。

 

まず財政論議について。平成21年度予算における議会費の総額は、全予算構成比のわずか1%。議会をもし完全に廃止したとしても1%の予算の削減にしかならないのです(もちろん不可能ですが)。

 

このことからも財政再建の最も大切なところは、99%の執行機関の予算をいかに効率化し、ムダをカットしていくことであり、いくらがんばっても1%の範囲内での削減は極めて限度があると言わざるを得ません。

 

田川市区長会は、議員定数削減に関しては毎回出されているようです。前回の内容について私は把握していませんが、やはり財政論議が大きな割合を占めていることは間違いないと思います。

 

しかし財政論議であるなら、ぜひ残りの99%について区長会と忌憚ない議論をしたいと私は思っています。1%に対してのみの議論に終始すると、枝葉末節となり、本質を見失ってしまう危険性をはらんでいます。

 

もちろん1%であっても0.1%であっても税金は税金。聖域なく議論することはとても大切なことですし、1%だからといって議論するなとは言うつもりもありません。しかし議員削減に関して財政論議を主テーマにすることにはやはり問題があります。財政再建という重要なテーマは、物事の本質をしっかり見た議論を行わなければならないと強く感じます。

 

では市議会議員の削減が、住民自治にどのような影響が出るのかについて、田川市区長会は以下のように要望書に書いています。

 

議会チェック機能が低下するおそれがあることは市民の本意ではありませんが、反面、議員の少数精鋭化や全市的な視野を持つこと、議論の迅速化等がはかられるとともに、市民一人一人が意識や責任を再認識することにより市民活動の活発化にもつながると考えます。

 

この文章には議員削減によってまず議会が「少数精鋭化」すると述べています。しかし少数になれば、精鋭化するという根拠はどこにもありません。これはすでに議員削減をおこなっている自治体議会を検証すれば分かることですが、私が知る限り議員削減によって少数精鋭化し議会改革が進んだという事例は聞いたことがありません。ぜひこの点は根拠の明示をしていただければ、と思います。

 

「全市的な視野」についても同様です。議員が削減すると全市的な視野を持つ、というロジックは私の中ではどうしてもつながりません。

 

「議会の迅速化」についてはどうでしょうか。私自身は迅速化を推進するのは、議員数ではなく、議会制度にあると思います。議員が削減されようとも、本会議・委員会・各会派代表者会議に全員協議会、それらの制度は残ります。であるとすれば、時間軸としてはなんら変更点がないことになります。

 

もちろん執行部が「根回し」を行うという点で、根回しをする対象議員が少なくなることは迅速化につながるかもしれません。しかしそれは執行部にとってのはなしであり、議会自身の迅速化にはもちろんなりません。

 

「市民活動の活性化」についても、議会改革や市民との協働によってなされるべきものであり、議員定数の削減で可能になるとは思えません。例えば田川市議会も定数を30名から段階的に22名まで削減をしてきましたが、これによって市民活動が飛躍的に活性化したかを見ていくことで、立証されていくと思います。

 

またこの要望書には、「近隣市における議員定数等を踏まえ」とあります。しかし地方分権時代を望むのであれば、その基本単位である地方政府の立法機関(地方議会)のあり方は、他の自治体と横並びであるはずがないことは言うまでもないことです。ようするに、近隣市における議員定数というのは地方分権社会における田川市は関係のないことなのです。

 

付言すると、その横並びの方針こそ、地方分権とは正反対となる危険性をはらんでいます。

 

では田川市において何名の議員が適当なのか、という答えは私自身も持ち合わせていません。ただ現状で唯一の指標となるのは、地方自治法に規定された田川市に定められた法定定数30名しかありません。

 

地方分権社会は、多様な意志を持った市民が主体となり、議論することが求められます。ようするに多様な住民意志を議会という意志決定の場で議論するには、多様な意見を持った議員が意見表明をし、また監視と批判を行うことが求められるのです。

 

議員数の議論について、このように住民自治を田川市で行う中で、議員数がどれだけ必要なのか、という自治の視点で議論したいと思うのです。

 

しかし今回の要望書の根底にある部分も、我々議員は見落としてはいけません。よく市民からは「議員は何をしているのか分からない」「そんなに議員が必要なのか」と私自身も言われます。市民の根底には議会や議員に対する不振や不満がかなりあることは紛れもない事実であり、今回の要望書にその点は明示されていないにしても、根底部分に不振や不満があることは間違いないと私は思います。

 

その点は、議会改革や議会情報の積極的な公開、市民との協働、積極的な議論などによって地方分権社会にふさわしい田川市議会を構築しなければなりません。そしてその構築は一刻も早く行わなければなりません。

 

ただ言うと、今述べたように議員や議会に対する不振や不満については、制度や行動の改革によってなされるべきものであり、定数削減によってなされるものではないと私は思います。

 

もっと言うと、現在いる田川市議会議員は、市民が投票によって選んだ議員です。議員個人に対する不満や不振は、次の投票行動で示していくことも重要です。その点で選挙での一票というのはとてもとても重要なのです。

 

区長会の皆様とは、これまで述べてきた点を踏まえ、ぜひオープンな場で議論できればと思います。

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