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教育費増額修正は「無謀なやり方」だったのか

2010年03月18日

今日、朝日新聞・毎日新聞・西日本新聞の各社で市長の定例記者会見が発表されていました。今回議会が総務文教委員会修正案として提出した少人数学級導入費に関する増額修正案について「心外」と述べ、「ルール無視」「無謀」とまで言っています。

 

あまり触れないでおこうか、とも考えましたが、記事中にあるコメントの中で、何点か我々の立場も主張しなければならない部分もあるので、今から整理して、反駁していこうと思います。

  

まず市長は市立小学校少人数学級導入費用増額補正予算について

 

「昨年12月に2011年(平成23年度)には実施すると明言していた」

 

と述べています。しかしこれは、なんら明言してはいません。その理由を以下、述べます。

 

「昨年12月に実施すると明言」とは、一般質問に対する答弁をあげているんだろうと思います。その際の議事録を確認すると、市長は次のように述べています。

 

「22年度から具体的に取り組ませていただいて、結果を23年から実行できるような体制づくりを考えてまいりたいと思っております」

 

そもそも明言とは辞書には「はっきり言いきること。」とあります。もしこのとき市長は「平成23年度から少人数学級を必ず実施します」と言えば、それは明言になるでしょうが、「考えてまいりたい」という状況では、それは「少人数学級実施」を「明言」したということには当然なりません。

 

事実、他の一般質問でも例えばパブリックコメントについて「平成20年度実施に向け取り組みたい」と執行部は答弁しているのにもかかわらず、平成22年度になろうとする今日まで具体的な取り組みは行われていません。

 

明言に近い状況でも実施していない執行部ですから、上記の言葉を聞いて「市長は平成23年度には行うんだ」とはっきり感じることができないのは、ごく自然なことです。

 

この「明言」という発言についての私の意見は以上の通りです。

 

次に毎日新聞では市長のコメントの中に

 

「執行部は財政状況全体をみながら計画的に行政を進めている。そのルールを無視した無謀なやり方」

 

と議会審議そのものを批判しています。

 

この言葉は今回の増額修正が、無計画並び無謀と予算修正そのものを全否定している内容になっています。

 

では議会は財政状況を「無視」「無謀」「やり方」を決定したのかを検証してみたいと思います。

 

最低でも今回の記者会見であるように、執行部は再来年度からこの予算を計上する予定なのであれば、我々市議会側が考えるべきは、来年度予算の財源のみと言うことになります。

 

その点で議会は昨年、議会公用車の廃止を決定し、来年度予算には議長の移動等に要するため、タクシー代として120万円を計上しています。議会交際費の50万円の削減分を入れると約930万円の削減効果があります。また今後、新たな削減案についてなんらかのアプローチを行う予定となっており、それらを入れると、1483万円の予算は十分確保可能だと考えます。

 

また子どもの教育の観点でこの問題を見ていくと、もっと本質が見えてきます。今回市長は再来年度から行うと言ったそうですが、今回対象となる弓削田小・後藤寺小・大藪小の2年生および田川小の3年生は、再来年度も同じ学年でいるわけがありません。そう、永久にその年度を取り戻せないのです。

 

私自身、そして今回の増額修正を決断した多くの総務文教委員も簡単に決断したわけではありません。しかし財政的にクリアできるという範囲内で、田川市の学力向上に資するための人的配置を急ぐべきと考え、今回の決断に至ったわけです。本質的には子どもの教育をどうにかしたい、という思いからなのです。 

 

また今回は議会側が予算を増額してつけたのですから、総務文教委員会の責任は重大です。今後はそれに見合った効果があったのかなど、今後の評価は議会と教育委員会で行う必要も生じてきます。

 

以上のような状況下で、議会の増額修正が、財政状況を「無視」し「無謀」に「やり方」を決めてはいないことをご理解頂けるものと思っています。

 

ではその「ルールを無視」について違う視点として、地方自治法や条例等、関係法令に違反しているのではないか、という点で見ていこうと思います。

 

もちろん予算編成に関しては、地方自治法第211条に規定されています。そこには予算編成権は首長部局のみに認められた権利となっています。一方で、その予算を修正、否決する権利を議会は地方自治法で保障されています

 

特に今回の増額修正は地方自治法第97条2項に規定に「予算について、増額してこれを議決することを妨げない。」とあり、法律上保障されています。

 

しかしその後に「普通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない。」という但し書きがあります。

 

逐条地方自治法ではこの但し書きについて

 

「予算の趣旨を損なうような増額修正であるか否かの判断は、当該増額修正をしようとする内容、規模、当該予算全体との関連、当該地方公共団体の行財政運営における影響度等を総合的に勘案して、ここの具体の事例に則して判断すべきもの」

 

と昭和52年10月3日の旧自治省通知で明示されています。

 

今回の少人数学級実施のための増額予算1483万円は、内容面でも執行部が実施を検討していることからも齟齬はありません。また規模や当該予算全体との関連では、来年度予算245億4436万円と比較すると、少人数学級の増額修正分は、来年度予算全体の実に0.059%です。「行財政運営における影響度」の観点からもクリアされているものと解されます。

 

以上、法律的な観点からも今回の増額修正は、地方自治法に乗っ取った正当な行為であります。

 

一方、ルールという観点からは、市長給料の点について報酬等審議会に諮問しなかった点は条例上においても問題があると考えます。

 

事実、田川市特別職報酬等審議会条例第2条には

 

「市長は、議員報酬の額並びに市長及び副市長の給料の額に関する条例を議会に提出しようとするときは、あらかじめ、当該議員報酬等の額について審議会の意見を聞くものとする。」

 

という一文があります。

 

本来条例上「ものとする」はあまり使ってはいけない用語(しなければならい、と言った義務規定より弱いが義務規定という曖昧な状況なため)ですが、基本的に法律的には義務規定ですので、この条文を読む限りは、議員や市長、その他特別職の給料を扱う際は、必ず特別職報酬等審議会に判断を仰ぐ必要があると言うことになります。

 

以上が、私が今日朝日新聞、毎日新聞、西日本新聞の記事を見て感じた感想及び反駁です。

 

そもそも私は今回の議会はまさに地方自治における二元代表制の役割が見事に発揮された先駆的な事例だと思っています。

 

二元代表制における「二元」とは議会と首長です。それぞれが住民の代表者として対等平等な関係を維持し、一方に権力の集中が発生しないよう、相互抑制と均等をはかることが求められます。

 

そのことは単に首長に対する抑制機能だけではなく、議会が積極的な政策提案を行うことをそこには求めています。よって、今回の事例のように、議会側もより政策形成に大きく関与する必要性に迫られています。

 

議員は法令や仕組み等についてしっかり勉強し、その上で住民や現場の声に耳を傾け、議会としてなにをすべきか、なにができるのかをこれまで以上に考えていかなければなりません。

 

今回の少人数学級に関する増額修正は、これまでの一般質問、本会議や総務文教委員会での提言、所管事務調査での学校現場の声など、しっかり議会として勉強を重ね、声を聞いてきた結果に他なりません。

 

事実今回の増額修正に関しては、「市民と議員の条例づくり交流会議」のメールニュースにも田川市議会の増額補正に関しては、「議会改革関連情報」として全国に発信されるなど、全国的な議会改革のニュースとして取り上げられています。

 

またツイッターやネットで知り合った全国の自治体議員、行政関係者から多くのご意見を頂いているなど、すでに 注目の的になっています。

 

もちろん議会側が市長に対して、修正案を出すというのはこれまで議会ではなかったことだけに、仮に理論上問題ないとしてもなんらかのハレーションが生じることをなんら否定するつもりはありません。

 

しかしそれは田川市議会がより活性化するための第一歩であり、また議会と首長関係を再構築する大きな機会です。

 

もちろん最終的には24日の本会議で決定されます。ぜひ多くの議員とともに、修正案の可決にむけ、私も取り組んで参ります。

 

修正案が出たことは健全な議論の結果です。そして議論=批判ではありません。

 

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